2012年2月13日月曜日

白鳥宮

週末、運動不足解消に少し歩きたいね、と夫と二人で出かけました。氷点下の空気は凍てつく寒さで、さて一体どこへ行こうか迷ったあげく、ドイツの小さな町Kleve(クレーフ)へ行ってみることにしました。ドイツ国境までは東へ車で15分、さらに15分ほど畑と林の間の道を走るとそこはもうKleveの町。

ライン川の支流に沿って広がるのどかな町並み、小高い丘の上の白鳥宮と呼ばれる古城を目指しました。外気温氷点下5度前後、10分も歩いているとかなり寒さが堪えます。白鳥宮Die Schwanenburg と呼ばれる所以は、ヨーロッパでかなり広く言い伝えられている「白鳥の騎士」伝説だそうで、ワグナーのローエングリン筋書きにインスピレーションを与えたストーリーだというのですが、この街との関係はよくわかりませんでした。
現在も市役所として使われている建物の中庭を抜けて、高さ180フィートの白鳥の塔に上りました。中庭の噴水にも白鳥がモチーフに。

塔の内部は最上階の展望スペースの他にこの辺り一帯の地質学上の貴重な資料が展示されています。まず、このマンモスの頭蓋骨の展示にびっくり、その巨大さに二度びっくり。

上腕骨だそうですが、私の指と比べて下さい。

近郊のBorth(ボルト)にはヨーロッパ最大、
(もしかしたら世界最大)の岩塩の採掘場があり、地下550メートルで採掘された岩塩の大きな固まりが、その地層の違いで赤土のような色からクリスタルのような塩まで展示されています。写真では大きさが分りづらいですが、手前のうすピンクの固まりは15センチ四方ありました。
さらに展示は続きます。Kleveの統治者を12世紀に遡って年代を追って解説したパネルが並び、その中にオレンジ公ウイリアム(ウイレム)を発見。後のイングランド王になった若きウイレムが叔父の統治するこの館に滞在していたという、ただそれだけですが、オランダの歴史をひもとくと必ずキーパーソンとして登場する人物、当たり前のことですが、昔は国境というものが今とは全然違ったんだなと不思議に納得したのでした。


そして、Kleveの最大の見どころ?がこれ。白鳥のベンチが町のあちらこちらに置かれています。これは何とオレンジ色ですが、普通の白ももちろん。

こんなおしゃれな白鳥や、

黒鳥も。
寒いなか、何とも楽しい町歩きになりました。









2012年2月12日日曜日

マイナス19度

10日ほど前からヨーロッパ中が寒波に見舞われています。ここシント・アントニスでも一時マイナス19度を記録、その後もマイナス10度台をうろうろする日々。室内の窓ガラスが朝起きるとガリガリに凍り付いているのには、さすがに驚きました。運河が国中に張り巡らされているオランダでは、冬になると誰もが話題にするテーマがあります。

「Elfstedentocht、eleven cities tour, フリースランドの11の町をつなぐ全長200キロに及ぶスピードスケートの祭典が今年こそ開催できるのだろうか?」

コース全域の氷の厚さが全て15センチ以上であることが条件とあって(何しろ参加者16,000人の荷重を支えられるだけの厚さが求められる)、前回の開催は1997年、今年はこの寒波で15年ぶりの開催への期待が大きく膨らみ、オランダ中がこの話題で持ち切りでした。「開催が決まったらオランダ中がひっくり返るほどの大騒ぎになるんだよ。」と、興奮しながら語る友人、知人たち。

結局、開催は無理という主催者の最終判断で、それまでの日夜を分たず行われた人海戦術で
のコンディション整備に終止符が打たれました。

その日から、オランダ人は誰一人としてこの話題を口にしません。語り出したらああだこうだとそれぞれが持論を繰り広げるだけの不満や意見があるのでしょうが、それを決して語りません。「あの騒ぎは夢だったのだろうか」という様変わり。

それで思い出したのが、2年半前のワールドカップ決勝戦です。オランダが前評判通り勝ち進んで行き、それに比例してオランダ人のサッカーフリーク度は加熱して行った訳ですが、決勝戦でスペインに負けたその翌日の様変わり。あの時も「あれは夢だったのだろうか」と感じたのでした。

この二つの事例だけで、オランダ人気質を論じるのは甚だ乱暴かもしれませんが、私はかれらが「機を見るに敏」なのだと思います。というか、覆水盆に返らず、なら一切振り返らない、そういうことに時間と労力を使わないと皆が暗黙のうちに認識し合っていると言ったら良いでしょうか。同じような場面を仕事仲間との間でもたびたび経験します。何かを生み出すための議論はよいが、何も生み出さない議論の為にお互いの貴重な時間は使わない。まさに功利主義的オランダ人の真骨頂なのかなと思うこのごろです。
凍り付いた運河を船が通るたびに氷が砕かれて、水面全体がオンザロック用の氷状態

帰宅途中、降りしきる雪で沿道の家が全部粉砂糖をまぶしたお菓子の家になりました

氷点下19度まで下がった日の朝、窓ガラスの内側がこの状態でした